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西炯子 娚の一生

30女と50男の恋愛。前に踏み出せない女の生身の姿「娚の一生」

ブルネイ

今回ご紹介する漫画は、西炯子の「娚の一生」です。30代半ばのヒロイン・堂園つぐみとかつてつぐみの祖母に片思いしていた海江田醇との複雑な恋愛が描かれた本作は、アフターファイブに読んでほしい作品となっています。

大人だからこそ生まれる躊躇い

西炯子 娚の一生
大手電機メーカーに勤め、課長というポストに就きながらも、大きなプロジェクトに携わることへの気力が尽きた主人公・堂園つぐみ。彼女は長期休暇を取り、祖母のもとへ身を寄せます。しかし、すぐに祖母は亡くなってしまうのです。

お葬式を終えた後に、祖母の家でつぐみは1人っきりになります。一夜明けて、つぐみは家の庭に見知らぬ男が立っていることに気付きます。男の名前は海江田醇。彼は祖母のかつての教え子であり、なぜか家の離れのカギを預かっていました。

後に判明しますが、海江田は大学時代、講師として学校に訪れていたつぐみの祖母に片思いをしていた人物。そのためか、お葬式の日に出会ったつぐみに、一目ぼれをし、彼女へアプローチしてきます。

しかし、つぐみは過去に妻子もちの同僚と不倫をし、最終的には捨てられて以来、恋に消極的となっていたのです。そのため、海江田の気持ちに応えないのですが、かといって突き放すこともできないまま奇妙な同居生活が始まります。

 中年男女の恋愛は、10代の恋愛のようにひたすら前に突っ走ったりしないものです。たった1歩を踏み出すのにも慎重になり、相手の好意を素直に受け取れないものです。

 本作で描かれるつぐみの姿は、生身の中年女性そのものです。そのことから、本作は大人の女性の共感性が高い作品となっています。

大人の女の立場

西炯子 娚の一生
つぐみは30代半ばという、結婚に諦めを感じ始める微妙なラインの年齢です。そして、海江田もまた51歳の中年男性。

いい大人の2人、それなのに恋人関係ではない彼女らが同じ敷地で生活している光景は傍目から見れば違和感を感じるでしょう。お互いもそれを薄々と感じてはいますが、つぐみは、このぬるま湯に浸かり続けます。

今さら新たな恋をする元気はなく、かといって注がれる好意を手放すこともできない。その身勝手な乙女心ですが、海江田は許します。

しかし、海江田は決して現状維持をし続ける気はなく、つぐみの親族たちが集まった際に告白をします。

「葬儀の席で はじめ誰とは知らず“きれいな女がおる”と思いました

…戸惑いました でも

名も知らんこの人の近くにおりたいとぼくの何かが決めてしまった

それが 先生の孫娘やったのは…

……でも “恋”なので仕方ありませんでした」

(「娚の一生」 第1巻 第6話p181.より)


海江田にとっては2度目の恋。その真摯な気持ちは、固く閉ざされたつぐみの心を徐々に開かせます。

恋に傷ついた女性を大人の男性が癒す。この王道設定が、女性読者の心をくすぐる作品です。

西炯子 娚の一生
「娚の一生」

(文・ブルネイ)

ライタープロフィール

AFTR5編集部
女の子座りができないブルネイです。
地べたに座るのが苦手、掘りごたつ派。