好きと憧れ。2人の女性に惑う男「夏の前日」第2回〜はなみ編〜
アフターファイブに読みたい漫画たち。前回に引き続き、主人公・青木哲生とヒロイン・藍沢晶の恋愛を描く「夏の前日」を紹介します。今回は、晶のライバルとなる“はなみ”にスポットをあてた『はなみ編』です。
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“はなみ”の存在
哲生は学内でヒマワリの花束を持った少女と出会います。その後も何度か学内で姿を見かけ、彼女が同じ大学の学生で、名前を“はなみ”ということを知ります。彼は彼女を見かける度にスケッチブックにそのことを残すほど強い関心を寄せます。しかし、なぜそこまで気になるのか哲生自身も分からず、晶と肉体関係を結んでいたこともあって、さほど気にしていませんでした。
しかし、晶はそうではありません。偶然スケッチブックに書かれた“はなみ”に強い嫉妬心を抱くのです。哲生はそんなことは露知らず、晶と会い続けます。
そんなある日、哲生の友人・亜藤森が、哲夫に自分の彼女を紹介してきます。彼女の名前は、小早川華海。哲生の視線を奪った少女だったのです。
憧れが届く範囲になる
森は哲生が華美のことが気になっているとは知りません。華美も哲生と会うのは初めてだと思っているため普通に接しますが、ただ1人、哲生だけがこの関係に戸惑っていました。“はなみ”という名前しか知らなかった憧れの存在が突然自分の前に現れ、身近な存在になる。残酷な形で夢が壊されるも、友情を壊したくなかった哲生は、森に悟られないよう平静を装い続けます。
そんな思いとは裏腹に、華美への気持ちが大きくなっていく哲生。そんな彼の心に一撃を与えることになるのが“写真”です。
華美にお願いをされて、ヒマワリを持った彼女の写真を撮ることになった哲夫。それを貰いうけた哲生の、華美に対しての特別な感情は加速する一方でした。スケッチブックに写真を写生し、絵として残します。そこには、華美が微笑む「顔」が描かれていたのです。
女性によって人生を変えられた男
落ち着きがある晶とは対照的に、華美は無邪気な少女。くるくると表情が変わり、時にはわがままを言って哲生を驚かせます。彼女は、哲生が自分に惹かれているとは全く気付かず、明るい笑顔で翻弄し続けます。
晶は確かに哲生に刺激を与え、いい方向に向かわせた女性です。しかし、華美は芸術家としての哲生の欠点を克服させます。それは晶にはできなかったことでした。
一方は両想い、一方は片思い。同時に2人の女性を好きになった哲生の心は大きく揺れ動くことになります。晶を好きなことは変わりがないのに、体を重ねても満たされないことに気付いた彼は、徐々に晶から逃げるようになります。
人は1人の人間だけを想うようにはできていません。感情が揺れ動くことは避けられるものではなく、単純に良い悪いとは言い切れないものです。
晶と哲生の関係は恋人同士のような強い絆で結ばれたものではなかったのです。華美の存在によって、いとも簡単に関係が不安定になったほど脆く、確かなものは「好き」という感情のみ。
恋人関係に収まらなかったのは2人の意志ですが、それは障害がなかったためです。華美の存在が割って入ったことで、2人はこの関係の弱さに気付きます。
「好き」と「憧れ」。それぞれの女性を別の思いで見る哲生は最後、自分の中の答えを導き出します。その答えが知りたい方はぜひ、本作を読んでみてください。
(文・ブルネイ)
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